その声でいつか

何でもない景色の、ほんの一部に過ぎなかった。


俺は彼女を知らない。

名前も、
クラスも、
何も、

知らない。


知ってるのは、


彼氏がいるって事と、
彼氏が“ユキ”って事。


それだけ。



『気をつけろよ』

『心配ー?』



すぐそばで聞こえる2人の会話。

少し冷めた感じの彼氏は呆れたような声を出すのに、彼女はそれすらも魔法の言葉のように喜んで受け取ってる。


あれが“スキ”って感情?


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