レモン・マジック
「簡単に言わないでよ、」
「あー…うん。それはちゃんと言っとくべきだよな。悪かったよ」
「う、ん」
そんな素直に謝られたら
正直困る、
紺野くんが見せてくれる
一つ一つの表情に
何だか毎日心が踊る。
まさか…
いや、まさか。
「あ、そうだ」
「ん?」
「背高くて黒髪で口悪い陸上部の人。あの人1年生なの?」
「…は?」
「え?さっきここにいたんだけど…」
「鏡が来てたのか…!?」
「鏡…?っひゃ、」
紺野くんはいきなり
私の両肩を力いっぱい掴んだ。
「あいつ来てたのかよ…?!」
「いたっ…痛い、よ」
「え!?あ!悪い…」
紺野は我に返ったのか
私の肩をつかんでた手を
ばっと外して
バツが悪そうに
行き場を失ったその両手を
ずっと浮かせていた。
「あの人、鏡っていうの…」
「あいつ…やめたはずなのに…」
ぶつぶつと一人で呟いている。
鏡って人…一体何者?