泣き虫Rocker
顔を出したら、ずずずっと皆が席を空けてくれた。それはもちろん、イチキの隣。そんな配慮はいらない、と誰を睨んでいいのかわからないまま、とりあえずイッペーさんを睨んで、イチキが早く座れよと急かすままに腰を下ろした。
そして、そのまま酔っ払いに絡まれてしまった。

「あー、そうですか」

「園田! ちゃんと聞けって」

「聞いてます」

「よそよそしいっ!」

出来上がってしまったイチキには何を言っても通じない。適当に流しておこうと思ったのに、意外としつこい。

「…………」

「かなりノリいいのに、何が気にいらねぇんだよ」

まだ、ブツブツ言って。
ちょっとあたしは面白くない。
あれこれと支度して、時間が掛かったのは誰のためだと思ってるの。

「園田さぁ、」

「あのねぇ!」

あたしのイライラにも気付かずに、まだ言葉を続けるイチキにやっぱりって言うかなんというか。

「ダチとか、あたしに宛てたメッセージかなんなのか知らないけどっ! ラブソングでもなんでもない友情やらなんやらを詰め込んだ曲にあたしが気分良く聞けるわけないでしょ! 井之村さんの曲がイチキの歌詞で台無しだってっ!」
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