また明日。
ドラマはすでに始まっていて、場面は男の人が喫茶店にいるところだった。
『コーヒーひとつ。ミルクもつけてください』
と、言っている。
役を演じているのは、最近人気の男性芸能人だった。
『かしこまりました』
ウエイトレスが、そそくさと去ってゆく。
男は貧乏ゆすりをして、携帯を開く。
携帯の画面が写り、『着信一件』と表示されている。
着信は彼女からだった。
男が電話を掛け直すと、女の発狂している声が聞こえた。
しばらく2人は言い合い、男は携帯を閉じてテーブルに投げつけた。
…おそらく、振られたのだろう。
そこで場面が変わり、幼い女の子が出てきた…。
「樹理、洗濯物たたむの手伝って」
傍で母が言っている。
「今ドラマ見てるんだから待ってよぉ」
「大体、何を見てるの、そんなの…。あら、ユウ君じゃない?ねえ、そうよね?きゃあ、かっこいいわ」
母は洗濯物をたたむのを忘れ、ドラマにはまっている。
あたしは呆れた顔で母を見た。
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