【短編集】STAY
「……。」
少年は黙ったままだった。
相変わらず目線は本だが、何かを考えているのか本を読んでいるというより見つめている感じだった。
少女はそんな少年の様子を知ってか知らないか淡々と話を続ける……。
だが今度は話していると言うよりも呟いている様で、少し哀しげな空気が漂っていた。
「夢はそこで終わってしまったけど、私は最近その事ばかり考えていたの……。私の命より大事だと思えるもの。私は今それを手に入れたからそんな物々交換とは縁遠いけど、それでも……それでももし仮にあったら私は交換するのかなぁ…。自分がもし死んでしまうとしても、一時でもその望んだものと過ごせるって幸せなのかなぁ……。」
少しの間とても寂しげな静寂が続いた。
まるで少女の心を代弁しているように……。