窓越しのエマ
浜辺には僕とエマしかいなかった。

夏の盛りはとうに過ぎていたが、刺すような陽射しがぎらぎらと照りつけ、灼けた砂から薄く陽炎が立ちのぼっていた。

僕は波打ち際から少し離れたところに腰を下ろし、寄せては返す波と無邪気に戯れるエマを眺めていた。

亜麻色のワンピースからひょろりと伸びた手足は透明に白く、海風にさらさらとなびく薄茶の髪は腰まで届きそうなくらいに長い。

エマがそこにいるだけで、ただのうらぶれた浜が神秘的な光景に様変わりする。

エマはそれほどに美しかった。

彼女はまぎれもなく、僕のエマだ。


エマが僕のところに駆け寄ってきた。


「泳ごうよ」


そう言ってエマは、ワンピースの裾をつかみ、そのまま頭までまくり上げて脱ぎ捨てた。

ものの三秒で、エマは全裸になった。


僕は目の前にある白い裸体を鑑賞した。

発達途上の膨らみかけた胸の先に、ほとんど色素のない小さな乳首がつんと誇らしげに立っている。

青い静脈の浮かぶ太もものつけ根に、栗色の恥毛が申しわけ程度に生えていた。

エマにそんなものが生えているのは何となく不自然な感じがした。


エマがなぜ下着をつけていないのかというと、僕がそう望んだからだ。

彼女は僕を喜ばせるためなら何だってする。

エマはそういう女だ。
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