窓越しのエマ
薄っぺらな水色のガウンを着た男が、奇妙なポーズで座っていた。
やせ細った棒のような脚は内股に閉じられている。
胸の前によせた両手首は不自然な角度に曲げられ、指は不可解な形のまま固まっている。
まるで高圧電流を全身に浴びて、そのまま硬直してしまったようなポーズだ。
半開きの口から糸を引いてよだれが垂れ落ち、首元のよだれかけに黒い染みを作っていた。
虚ろな目は窓の外を眺めている。
一見して、四〇代半ばといったところだ。
この男がまだ二〇代だとは、到底信じ難い。
「あなたも私と同じなの」
エマが僕に話しかけている。
そう、僕は知っている。
「あなたは、あなた自身が創り出した虚像に過ぎないのよ」
目の前にいるこの男は僕だ。
意識の奥に閉じこめていた記憶が怒涛のように溢れ出す。
「これが私の一番大切な人」
そう言ってエマは、車椅子に座る僕の肩に手を置いた。
不意に、左肩に小さな重みを感じる。
右側で見下ろす位置にあったはずのエマの顔が、左側で見上げる位置にある。
「おかえりなさい――」
とエマが言う。
「エゥ、アァウ……」
僕は返事をした。
つまり、今日の散歩の時間は終わりということだ。
やせ細った棒のような脚は内股に閉じられている。
胸の前によせた両手首は不自然な角度に曲げられ、指は不可解な形のまま固まっている。
まるで高圧電流を全身に浴びて、そのまま硬直してしまったようなポーズだ。
半開きの口から糸を引いてよだれが垂れ落ち、首元のよだれかけに黒い染みを作っていた。
虚ろな目は窓の外を眺めている。
一見して、四〇代半ばといったところだ。
この男がまだ二〇代だとは、到底信じ難い。
「あなたも私と同じなの」
エマが僕に話しかけている。
そう、僕は知っている。
「あなたは、あなた自身が創り出した虚像に過ぎないのよ」
目の前にいるこの男は僕だ。
意識の奥に閉じこめていた記憶が怒涛のように溢れ出す。
「これが私の一番大切な人」
そう言ってエマは、車椅子に座る僕の肩に手を置いた。
不意に、左肩に小さな重みを感じる。
右側で見下ろす位置にあったはずのエマの顔が、左側で見上げる位置にある。
「おかえりなさい――」
とエマが言う。
「エゥ、アァウ……」
僕は返事をした。
つまり、今日の散歩の時間は終わりということだ。