窓越しのエマ
「僕はいいよ。見ててあげるから、一人で泳いできなよ」
エマは唇を突き出して不満を露わにし、くるりと身を翻して波際のほうへ駆けていった。
エマはどんどん海へと入っていき、腰くらいの深さになってから勢いよく水の中に飛びこんだかと思うと、そこから二メートルほど離れた辺りで水面から顔を出し、僕に向かって大きく手を振った。
僕は軽く左手を上げてこたえた。
陽光にきらめく海はまるで鏡のようで、遠くの空に浮かぶ細切れの雲が水面に映し出されている。
海岸線から長く突き出た防波堤の先には真っ白な灯台があり、その周辺を二羽の海鳥が風に流されるように飛んでいた。
クロールで泳ぐエマが、僕の視界を右に左に行き来している。
彼女は、僕なんかとは比べものにならないくらい運動神経がよかった。
きっと巨大な烏賊の化け物にでも襲われないかぎり、エマが溺れることなんてあり得ないだろう。
そして、そんな化け物なんているはずもない。
しばらくすると灯台のほうから、犬を連れた若い男が歩いてきた。
犬は首輪を外されているようで、きゃんきゃんと吠えながら水際と飼い主のあいだをせわしなく走り回っている。
海から上がろうとしていたエマも犬の鳴き声に気づいたようで、膝ほどの浅瀬に立ってそちらを眺めていた。
エマは唇を突き出して不満を露わにし、くるりと身を翻して波際のほうへ駆けていった。
エマはどんどん海へと入っていき、腰くらいの深さになってから勢いよく水の中に飛びこんだかと思うと、そこから二メートルほど離れた辺りで水面から顔を出し、僕に向かって大きく手を振った。
僕は軽く左手を上げてこたえた。
陽光にきらめく海はまるで鏡のようで、遠くの空に浮かぶ細切れの雲が水面に映し出されている。
海岸線から長く突き出た防波堤の先には真っ白な灯台があり、その周辺を二羽の海鳥が風に流されるように飛んでいた。
クロールで泳ぐエマが、僕の視界を右に左に行き来している。
彼女は、僕なんかとは比べものにならないくらい運動神経がよかった。
きっと巨大な烏賊の化け物にでも襲われないかぎり、エマが溺れることなんてあり得ないだろう。
そして、そんな化け物なんているはずもない。
しばらくすると灯台のほうから、犬を連れた若い男が歩いてきた。
犬は首輪を外されているようで、きゃんきゃんと吠えながら水際と飼い主のあいだをせわしなく走り回っている。
海から上がろうとしていたエマも犬の鳴き声に気づいたようで、膝ほどの浅瀬に立ってそちらを眺めていた。