いつか、どこかで、誰かが望んだ永遠
「ふぃ~。数え切れん程、アレフの治癒神術を受けているけども、
 こう、他のヤツのと違って、温か味があるんだよな~。」
 
 お茶を飲んだ後のホッと一息感を出しつつ、
 そんな感想を述べるバルトに無言で頬を染めるアレフ。

「そりゃあ、アレフわはうっ!」
 
 何かを言いかけるクレインだが、途中で奇声をあげる。

「?」
 
 バルトは不思議そうにしているが、
 足元ではアレフの足がクレインの足を力一杯に踏みつけている。

「な、な、な…。」
 
 涙目で震えるクレイン。

「何をするのさ、アレフゥゥゥ!」
 
 アレフの制服の胸倉を掴んで、今にも殴りかかりそうなクレイン。

「……明日、君の机の上に、一輪の花が供えられる事になるが…、
 それでもやるというのか?」

「うぐっ!」
 
 クレインの勢いに圧されもせず、むしろ、冷たく言い放つアレフ。
 
 身体は女のクレインより細身であり、運動能力も高いわけではないのだが、
 多彩な神術を使える彼に勝てる同級生はいない。

「それに、僕はバルトの事なんて、べ、別に、大事な友達としか…。」

「まだ、そんな事を言うんだね。」
 
 頬を染めて、最後の方は聞き取れない程の小声で話すアレフに、
 半ば呆れ気味のクレイン。
 
 アレフとクレインは小等部からの付き合いで、
 彼がバルトを密かに慕っている事など、
 付き合いの長い彼女にとって、既にバレバレの事である。

「僕は想いが伝わらずとも、一緒に居られるだけでいいんだよ。」

「アタシは見たいけどね。男同士のラブストーリー。」

「……。」
「……。」

 健気なアレフに対して、本気か冗談かをさらりと言うクレイン。
 
 二人の間に数秒の沈黙が流れ、不自然な笑みが起こる。
 
 直後、クレインは後ろを振り返り、必死な形相で走り出し、
 持久力において圧倒的に不利でも、全力で彼女を追いかけるアレフ。
 
 二人は疾風の如く、教室を出て行った。

「お~~い。」

 完全に蚊帳の外となり、寂しそうにするバルトを独り残して。
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