ピアスに秘めた想い
悲しい別れ
俺は中学生になると同時に、一人暮らしを始めた

紫桜学院中等部から歩いて数分のマンションを親に買ってもらった

少しの時間も無駄にしたくなかったんだ

1分、1秒が俺の大切な時間だったから

克海に負けない力を身につけるために、寝る間の惜しんで勉強をした

身体を鍛えた

そして人脈を築いた

「勇人様、お手紙が届いております」

学校から帰ってきた俺に、メイドが1通の手紙を渡してきた

封書の香りが鼻腔をくすぐった

忘れていた胸の苦しみが、俺の体を支配する

どうして?

なんでクレアから手紙が来るんだ?

手が異常に震えた

読みたいけれど、読みたくない

俺は手紙を持ったまま、部屋の奥までよろよろと歩いて行った

俺の帰りを待っていたかのように、家の電話がけたたましく鳴り響く

俺の心臓は誰かに掴まれたのではないか…と思うくらいどきっとした

「勇人様、ご主人さまでございます」

父上から電話?

「わかった」

俺は近くにある子機に手を伸ばした

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