ピアスに秘めた想い
「どうもぉ、わざわざお忙しいのに通夜に参列してくださって感謝しております」

父に連れられて、俺はクレアの通夜に行った

父の姿を見つけるなり、克海が近づいてきて頭を下げてきた

俺にじゃない

父親に…だ

俺は父親の隣に立って、克海を眺めた

あんな男の手で、クレアが逝くなんて納得いかねえよ

「勇人さんも来てくれてありがとう
君のことを気に入っていたみたいだから、きっと喜んでいるよ」

「クレアさんには、生前、とてもお世話になりましたから」

俺は作り笑顔で、克海に言ってやった

克海は驚いた眼をしていたが、すぐにニヤリとほほ笑んだ

「愛の指導も受けたかな?」

俺の耳元で囁いた

俺を怒らせたいのか?

「くだらない冗談に、九条の当主が振り回されているんですねえ」

俺は爽やかに答えた

腸は煮え繰りかえっているけどな

感情はもう表に出さねえって決めたんだ

クレアのために俺は強くなる

…んで、克波たちを守る力を身につけてやるんだ

後悔させてやる

クレアを死に導いたこと

俺に牙を剥いたことをな

< 16 / 29 >

この作品をシェア

pagetop