ピアスに秘めた想い
「父親は厳しい人だった
結果が第一な人で、他人に負けることを嫌った
だけど言っていることはいつも正論だった
悔しいけど、今も頭があがらねえよ」

「そうなんだ」

「ああ」

桃香の手が、すっと俺から離れた

「ごめんなさい
何か仕事している最中でしたよね?」

「あ? …まあ、次のターゲットを探してた」

「ターゲット?」

「『脅し』のターゲットだよ」

「まだ…やってるんですか?」

「『まだ』って失礼なヤツだな
俺は辞めるなんて一言も言ってねえだろう」

「そうですけど」

桃香が立ち上がった

母親からの手紙を、俺は桃香に返す

「金持ちが勝手な解釈で振るう権力には飽き飽きしてるんだ
その陰で泣いている奴がいる
苦しんでいるヤツがいるんだ
そういうヤツが少しでも少なくなるなら、俺は『脅し』続けるよ
金も儲かるしな
お前の大学資金くらいすぐに貯まるさ」

桃香が目を見開いた

「もしかして学費って…」

「ああ、俺持ちだ
西岡が逮捕されたんだぞ
桃香が学校に通い続けるには、誰かが払わないとな」

「ええ? あ…すみません」

桃香が深々と頭を下げた

「どうしよう
どうすればいいですか?」

「あ?」

「お金です」

桃香が一人で慌てている

馬鹿だな

俺が払いたくて、払っているんだから気にする必要はねえんだよ
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