ピアスに秘めた想い
「お夕食をご一緒にできると思いましたのに……」

クレアが作り笑顔で、俺の父親に向かって微笑んでいる

「すみません
次の予定がありますので」

もうクレアと過ごせないのか……残念だな

父親がクレアに負けないくらいの作り笑顔で返事をした

俺のとなりに立っている父親が、門に向って歩き出した

俺は克海の隣で、寂しそうにほほ笑んでいるクレアを見つめた

あの白い手を握って、門に向って走り出せたらどんなにいいだろう

こんな広さしか取り柄のない家で、クレアを閉じ込めて、可哀想じゃないか

克海にはもう他の女がいるんだろ?

この屋敷のどこかに愛人がいるんだろ?

なのに、自由になりたがっているクレアを閉じ込めている

金のある男は嫌いだ

我が儘で、他人の気持ちを理解していない

女を道具にしか思ってないんだ

女性にだって気持ちはある

それなのに、愛を無視している

俺はあんな大人になんかなりたくない

なってやるもんか!

金持ちだって、人の心のわかる人間になるんだ

クレアみたいな籠の鳥を減らしていってやる

だから・・・

俺は大人になるまで待っててよ

必ず、この屋敷から俺が出してやるから
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