ピアスに秘めた想い
「勇人、何をしているんだ」

背後から父親の声が聞こえてくる

俺は克海とクレアにお辞儀をすると、二人に背を向けた

俺はもっと大きい人間なってやるんだ

俺は誰にも頭を下げないくらいの人物になって、克海に文句も言わせずにクレアを自由にしてやる

それが俺の目標だ

「お前、克海が嫌いだろ?」

父親が俺に質問してきた

「ええ、嫌いです」

「本当に嫌いな相手には、笑顔を見せろ
嫌われていると悟られるな」

隣を歩く父親の言い分に納得できなかった

嫌いな相手を嫌いと言って何が悪い?

嫌いなんだから、笑顔なんて見せられるわけがない

「大切な物を守りたいなら……少しくらいの演技も必要だということだ
お前は小山内グループを支えていく人間になるのだ
敵には笑顔を見せ続けろ
どんなに悔しかろうが、どんなに憎かろうが
感情を表に出した方が負けだ」

「覚えておきます」

俺は車に乗り込んだ

隣に座った父親がぼそりと呟いてきた

「お前の想い人を死なせたくなかったら、私の言ったことをさっさと習得しないと殺されるぞ」

父の言葉に俺は目を見開いた

父は俺の想い人を知っている?

クレアに想いを寄せていると……

隠すつもりもなかったから

気付かれていたのだろう

俺の行動ひとつでクレアが傷つくってことか

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