沖縄バンド少年物語
間違いではなかった
 会場はまさにすし詰め状態、沖縄のスシはうまくないが沖縄で味わうすし詰めは快適だった。沖縄の労働者階級のご子息お嬢様方は知らないだろうが、小田急線の通勤ラッシュを彷彿とさせる人口密度だ!大きな海とおおらかな人々に育まれてきた俺たちには初めての経験だったが不快ではなかった。むしろワクワクした。興味の同じ若者が集まり同じ興味を共有することに興奮した。後に多くの若者が熱狂するが、今夜の時点で俺たちは完全な少数派だった。

東京からバックドロップボムとココバットというまったく新しいタイプのバンドがライブをするのだ。沖縄からは、パンジーチャンネル、スナフキンがエントリー。時代の行く末を敏感に嗅ぎ取った2バンドだった。俺たちは少数派ではあったが、二百人はいるといっぱいになってしまうクラブには入りきれない人が溢れた。九時からはじまったライブは十一時に終了し、一時からもう一度行われた。一回目のライブがはじまってしまい諦めかけていた俺たちは2回目のライブに入ることができた。

 トップバッター沖縄のスナフキンの一曲目のサビでノックアウトされてしまった!かっこぃいい!メロコアの勢いとメロディの美しさは普段CDで聞いているバンドより強烈だった。パンジーチャンネルは典型的な沖縄のアンちゃんだったが音楽は最高だった。硬派でダークなリフと歌詞が頭にこびりついた。暴れても暴れても疲れない。アドレナリン大爆発だ。倒れても倒れても誰かか助けてくれた。この日、今後何十回も繰り返す、ダイブというものをはじめて経験した。人の上に誰かがのせてくれる。すると、人の上をスイスイ進みステージと客席の間の僅かな隙間まで一直線だ。バックドロップボムはグルーブというモノを初めて体感させてくれた。ココバットはベースのひとが凄いオーラを放出していた。深夜三時終了。路上でくたばった。初めて自転車に乗れた時のような快感と興奮が体中を駆けめぐっている。この日、俺たち少数派は、本気で夢中になれるモノを見つけ、それが本物だったことを知ったのだった。

間違いではなかった。間違っちゃいなかった。

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