沖縄バンド少年物語
高校一年の秋まではサッカー部に入っていた。小学生から続けているサッカーは、監督や先輩にも、期待されていたし燃えてもいた。毎日のように、6時15分のバスに乗っていたある日の真夜中、缶コーヒーを買いに外へ出た。那覇の空に星は少ない。高校一年の夏に、合宿で行った恩納村の空には満点の星空が広がり流れ星を観ることができ、願い事はしなかったが、願いは無数にあった。コーヒーを飲みたいと言うより、家族から離れ1人になりたかった。数少ない星の光は、何も確定していない俺のようだと思った。確定というのは膨大に広がる時間に対して自分の進む道が決まっていないということだ。未来に対してだ。フゥワふわと浮くクラゲのようだが、クラゲのように気楽ではなかった。数少ない星の光は弱々しく、もしかしたらこの光を発した星は、消滅してしまっているかもしれない。とっても弱っちい自分のようで観たくなかった。次の日は6時15分のバスに乗れなかった。この日を境に、部活に顔を出さなくなった。自分でもびっくりしているが、それっきり小学生から続けたサッカーをあっさり捨てたのだった。サッカーは好きだけど、このまま続けてもサッカーで飯を食っていくことや、ましてやWカップに出場することは不可能だろう。と先輩や先生や友達に言ったが、なぜサッカーを捨てたのかは自分でも分からなかった。やめて一週間は開放感に浸れた。