“キス”のその後で…
「雅…」



ふいに名前を呼ばれた私はチラっと伊織を見た。



目の前にはふわりと柔らかく微笑む伊織。



「俺は出逢ったその日からずっと雅に恋してる。雅が兄貴に惚れる前から…ずっと…。」



「えっ…」



「だから…いいよ。今は代わりでも…。」



瞬間、



私の瞳にじわっと涙が滲んだ。



変わり…



違う。



「変わりなんかじゃ…」



「でも…」



言いかけた私を遮り、



突然、抱き締めてきた伊織は私の耳元に唇を寄せながら小さく呟いた。



「でも…いつか…俺のコト“好き”って言って。」



「えっ…」



「待ってるから…」



そして腕を緩めると、



目を見張る私のおでこに…



頬に…



軽いキスを落とすと再びギュッと抱きしめてきた。

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