PLAY-ROOMS
奴隷彼女(1)
 どっかの誰かが「それでも笑えるんだ」と、そう言っていた。
 そういえば、彼女はいつも笑っていたような気がする。気がするというのは、自分にとっては彼女の笑顔はとても歪で、まともに見たことがなかったからだ。
 見ないようにしてただけだろ。彼はそう言った。まったくもってその通りだ。ああそういえば彼女たちは、俺とあいつの関係を見ていつも苦い顔をしていたっけ。
 ただ、あそこにはあのとき、夢のような空間が広がっていた。どこからともなく集まった俺たちは、あそこでお互いに距離を置きながらも、そうだな、笑っていたような、そんな気がするんだ。

 そうだ。あのときほんの一瞬でも、俺たちは世界ってやつと向き合ってた。結果がどうなったかなんてのはどうでもいい。あいつはあのとき笑って、俺だって、笑っていた。だったら、何も言うことはない。それだけで、いいんだ。

 きっと俺たちの時間は、あの部屋で止まっている。ただ、それでもいい。そう思える時間を、俺たちは過ごしたんだ。―――きっと。


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