PLAY-ROOMS
 明日香はいつも通りにニコニコと、鞄を少し重そうにしながら2つ抱えて歩いている。って、いつの間に俺の鞄を。
「ご主人様がなにやらシャドーファイトに明け暮れている間に」
 ああそうかい。まあ、鍵を取り出したかったからちょうどよかったと言ったらよかった。
 かちりと、鍵を鍵穴に入れて回した。古いタイプの鍵だが、防犯にはこれといって問題はないだろう。
「うお、なんだこりゃ。サウナかなんかか」
「うわあ、蒸し風呂状態ですね。とりあえず換気しますか?」
 扉を開けたとたんに、もわっとした熱気が全身を襲ってきた。どうやら暖気をちゃくちゃくとため込んでいたらしい。
 お互いにそれぞれ、二つある窓を開けて多少は涼しげな風を送り込んでやる。
「とりあえずはこんなもんだろ。もう少ししたらクーラーでも付けようか」
「大賛成です。さすがの私も干物になってしまいますよ、これでは」
 冷蔵庫まで歩いていき、中から紙パックの麦茶を取り出す。ごきゅごきゅと喉を鳴らしながら流し込むと、全身に水分が沁み渡っていくのを感じる。
「ん、どうした? お前の分もあるから飲めよ」
 見ると、明日香が水道に顔を近づけている。どうやら蛇口からダイレクトで水道水を飲もうとしているようだ。
「え、いいんですか。ありがとうございます!」
 声をかけたとたんに満面の笑みで振り向くと、ダッシュでこちらまで駆けてきた。ふんふんふんと鼻歌を口ずさみながら、冷蔵庫の中の紙パックを取り出している。
「・・・・・・お前な。俺が麦茶すらやらない、そんなケチな男だと思っていたのか」
「やだなあ、違いますよ。あくまで私の習慣ですから。普段なら、食事のとき以外に水を飲むことすら珍しいんですよ」
 言いながら、不器用に紙パックの口を開けている。あんな開け方ではこぼれてしまうと思うのだが。
「ごっごっごっごっごっごっ! ぷはあ! 美味しいですなあ!!」
「そ、そうか。喜んでくれたようでなによりだ」
 案の定、口の横から麦茶が漏れて首にかかっているのだが、本人にはさほど気になることでもないらしい。
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