PLAY-ROOMS
 どうにか目の前の宇宙人の思考回路が判明しだした。考えてみればごくごく単純なことだったのかもしれない。そもそも俺にあんなことを言ってきた時点でそういうことだったのだ。
(なんか、不器用なやつだよな)
 あのとき、俺に似ているなんて思ってしまったのもこんなところが原因だったのだろうか。そう考えてみると、なにやら可愛く思えてくるから不思議だ。
「うーん。これだけは駄目、ですかあ。特にこれといってありはしないような」
 目の前で真剣に考えている明日香。一度可愛いと思ってしまうと、こんなところまで可愛く思えてくるから不思議だ。何もあんなに悩まなくてもいいのに。
「あっ、一つだけありました。けっこう大事なことで」
 突然、唸るのを止めたかと思えば漫画のように手を打ち合わせる明日香。ほらみろ。なんだかんだ言って、何をしてくれても大丈夫なんて女の子がいるはずはないんだ。もちろん、俺もめちゃくちゃになんでもする気なんてさらさらない。
「なんだ? なんでもいいから言ってみろ。そういうのは初めに言っとかないと面倒だぞ」
 麦茶を再びコップに注ぎながら、明日香に先を促す。こいつがどうしてもダメなんて、どんなことだろうか。案外普通のことかもしれないな。
 そんなことを考えながら、俺は麦茶を口に含んだ。

「あの、私のこと好きにならないでもらえますか? それだけで、とりあえずはいいんで」

 俺は、麦茶を噴き出した。
 そうして、俺と明日香の奇妙な共同生活は始まったのだ。

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