嘘で隠された現実(リアル)
俺は、天音の髪をそっと持ち上げ、それを後ろに流した。

隠れていた天音の顔が晒される。


「泣いた‥のか…?」


天音の頬には、涙の痕が残っていた。

更に視線を落とせば、ノートの上の滲んだ文字が目に飛び込んできた。

どうやら、歌詞を書きながら泣いていたらしい。

その事実に、胸が痛んだ。

俺のせいだということが‥判ってしまった…。


「俺なんかのせいで、泣くなよ」


天音に届かないことが判っていて、俺はその言葉を口にした。

天音に届かないと判っているから、その言葉を口にできた。
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