嘘で隠された現実(リアル)
「最低だな」


本当にそう思う。

誰よりも自分が、そのことを判っている。


好きな人を苦しめている自分が、世の中のどんな人間よりも愚かに思えた。

だが、それでも俺には、決して譲れないモノがある。

他人からしてみれば、馬鹿げたことなのかもしれない。

俺自身、僅かだがそう思った。

天音と居ると、いつまでも過去に拘るべきではないと、思わされた。

今目の前にある幸せに、目を向けていたくなった。


だが、やはり譲れない…。


過去がある限り、絶対に…。


あの日‥家を出たあの日に誓った、アイツへの復讐。

そのためなら、何だってする覚悟を決めた。


自分がまだ何をしたいのかは、はっきりとは判らない。

ただ判っているのは、そんな覚悟を決めた俺には、天音の存在が邪魔であるということ。

そしてこんな俺が、天音を振り回してはいけないということ。


それなのに…。
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