嘘で隠された現実(リアル)
立花さんは組んでいた手離し、俺に一瞬の視線を遣すと、優雅な仕草でカップを持ち上げ、その中身を口へと運んだ。


「手術はそう難しいものじゃないわ。海外ですることになるけど、お金も時間も、それほど必要なものじゃない。でもね、手術をしなければ、まず助からないのが現実よ。そして、それを判っていながら、水月が手術を拒んでいるのも現実」

そう言って、立花さんはタバコを取り出し、火をつけた。

「先生との話が終って部屋を出てきた水月がね‥こう呟いてたの。「これが最後のチャンス…」って。そのすぐ後よ。水月が貴方に逢いに行ったのは…。偶然なんかじゃない。水月は、貴方のことをわざわざ調べて逢いに行った。本当は貴方も判っているんでしょう?」
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