嘘で隠された現実(リアル)
音を立てることのないように、そっと部屋に身体を滑り込ませる。


ベッドに横になっている水月の目は、包帯でしっかりと覆われていた。

怪我というのは目のことだったのか…。

これなら、俺が声を出したりしなければ、水月はここに立花さん以外の人間が居るなんて気付かないだろう。


「で、どうしたの?確か明日来るって言ってなかった?」


「早く返事をした方が、水月は嬉しいかと思って」


その言葉に反応したかのように、水月は身体を起こした。

ベッドがギシッと鈍い音を立てる。


「それって‥承諾してくれるってこと?」


「ええ‥もしものときは、約束するわ。でも、対価は頂くわよ?」


「‥この前言ってたことだね…」

水月は、苦笑するように口元を歪めた。

「座ったら?」


「そうね」


立花さんは2つあるうちの1つに腰掛け、誘うように俺を振り返った。

だが、俺は水月の傍に行く気にはなれず、ドアのすぐ傍の壁に寄り掛かったまま、首を振ることでその誘いを断った。

それを見た立花さんは、微かに笑みを浮かべ、即座に水月に向き直った。
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