嘘で隠された現実(リアル)
「わざわざ言わなくても、郷花だったら、この先のことは判るだろう?それ以来、俺の火月を見る目は変わったよ。可愛い弟から、憎い存在へとね。幼いながらにも、勿論判ってた。火月は、何も悪くないってことくらい…。けど、母さんの言った通りなんだ‥理屈じゃないんだよ」


「水月…」

立花さんが、辛そうに呟いた。


話すどころか声を発することさえ許されていない俺は、どうすることもできなかった。

いや、たとえ水月の目を覆う包帯が無かったとしても、俺には何もすることができなかったのかもしれない。


「俺が何を考えてるかなんて気付きもしないで、火月は相変わらず俺に懐いてた。それが‥俺を苦しめるんだよ…」

水月は、両手で頭を抱えた。

「自分に懐いている火月は、やっぱり可愛かった。でも‥無条件に愛される火月が憎い。その矛盾が俺を苦しめた。火月だと笑って許されるようなことが、俺だと命取りになる‥本気でそう思った。頑張らないと、捨てられる。自分を偽ってでも、誰かを犠牲にしてでも、自分で自分を守らなければと、必死だったんだ。だから‥俺は火月を裏切った…」
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