嘘で隠された現実(リアル)
裏切った…その最後の一言が、狭い室内で異様に響いていた。


思い出さずにはいられない。

その日のことを‥水月の裏切りが始まった日のことを…。





あの日、俺は階段を上がりきったところで、水月に呼び止められた。

ゆっくりとした足取りで、階段を上がってくる水月。

今思えばその表情は、普段の水月にはない、危険なものを含んでいた。


「ねぇ、火月。俺のクラスの上田さんが好きって本当?」


「は!?な、誰がそんなこと言ったんだよ!?」


「で、本当?」


動揺する俺を無視して、冷静に言葉を続ける水月に違和感を覚えつつも、俺は静かに頷いた。

よく考えてみれば、水月に隠す必要なんかない‥そう思ったのだ。
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