嘘で隠された現実(リアル)
「何?そんなに怒ること?」


「怒ることだって?当たり前だろ!」


そのとき、リビングのドアが開く音がした。

きっと、この騒ぎに気付いた母さんだ…。

だが、俺はこの状況を見られて母さんに叱られることになっても、全く構わないと思っていた。

冷静になる余裕なんて、なかったのだ。


「‥本当に馬鹿だね、火月は…」


「っ!!」


俺は衝動的に、水月に殴り掛かった。

だが、その拳は、水月の頬を掠めることさえできなかった。


階段に背を向けたまま、水月がゆっくりと落ちていく。

決して俺から、目を逸らさずに…。


「み、水月!!」


我に返った俺が目にしたのは、階段の下で叫ぶ母さんと、意識を失い、倒れている水月の姿だった。


そして、病院で目覚めた水月は、「足を踏み外したのか!?」という父さんの質問に、身体を震わせながらこう答えたのだ。


「‥そうじゃない…。やったのは、火月だよ…」


視線だけは、俺を捕らえたままに…。





「火月が怒ると判っていて、わざと、俺はあんな言い方をしたんだ。まぁ、上田さんが俺を好きだって話は、本当だったみたいなんだけどね」


「どうしてそんなことを‥いいえ、何となく判るわ」

立花さんは、悲しそうにそう呟いた。

「わざと、階段から落ちたんでしょう?」
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