嘘で隠された現実(リアル)
住宅地の中に在る公園は、昼間は子どもの笑い声で溢れているのだが、夜である今は、当然ながらその騒がしさがなかった。

その代わり、静かな時間が流れている。

時折思い出したように吹く風が、冷たく肌を撫でた。


「風が冷たいな」


同じことを考えていた朱月に驚きながら、私は小さく頷いた。

そしてブランコに腰掛けた朱月を真似て、私も隣のそれに座った。


「ねぇ‥朱月、何かあったんでしょ?」


ブランコを揺らす朱月の姿が弱々しく見えて、私は無意識にそう声を掛けていた。


「何かって?」


「あたしが訊いてるの!ねぇ、この前あの人‥えっと水月って人に逢ってから、朱月変だよ?あの人って朱月の何?」


「…」


「朱月?」
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