嘘で隠された現実(リアル)
「別に大したことじゃねぇよ。ただ海外に行くことになったからさ。海外から日本の学校に通うなんて無理だろ?」

そう言って、朱月は笑った。


「海外?」


「そっ。だからバンドも続けらんねぇ。天音には歌詞書いてもらってたしさ、一番に話しとこうと思って」


このとき、私はどうするべきだった?

朱月が一番に、私に話してくれたことを喜ぶべきだったのかもしれない。

しかし私には、それを喜べるような気持ちの余裕など全くなかった。

現実を、受け入れられない。

私の頭の中は、整理ができないほどに混乱していた。


「あたし、嫌だ…」


「え?」


「嫌だよ。あたし、朱月と離れたくない」


気が付くと、そんなことを口走っていた。
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