嘘で隠された現実(リアル)
「良かったね。でも結局、俺は何もしてあげられなかった…」


「幸矢さん?」


「俺は、結果を聴いただけ。朱月の力になりたかったのに」

幸矢さんは弱々しくそう呟き、寂しそうに笑った。

「俺ができることと言えば、朱月を引き止めずに送り出してあげることくらいかな?」


「‥ホント、幸矢さんは優しすぎ」


「え?」

幸矢さんは、驚いた様子で俺を見た。


「だから、駄目だって思うのに、甘えたくなる」

俺は勇気を出して、幸矢さんを見つめた。

「幸矢さん、我侭言ってもいいか?俺、火月に戻るけど、名前は朱月のまま‥幸矢さんの子どものままでいたい」


「それって‥戸籍はそのままってこと?俺の子どものままで、いてくれるってこと?」


「そんな言い方されると、俺が幸矢さんの我侭聴いてるみたいじゃねぇかよ。今は、俺が我侭言ってんの」


「しゅ、朱月ぃーっ!」


幸矢さんは、今にも泣き出しそうな顔で、俺の名を呼んだ。

大げさだと思うけれど、そんな幸矢さんを見て、嬉しくないわけがない。
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