嘘で隠された現実(リアル)
「‥は?」


「え!?朱月先輩、何の冗談ですか?」


彗ちゃんが呆けたような声を発し、続けて響が、焦ったように言葉を続けた。


「冗談じゃねぇよ。今月で学校を辞める」


「今月って、もう5日しかないはずだけどねぇ」


「そうだな」


あっさりと頷く朱月にとうとう我慢の限界が来たのか、星は私から離れて朱月に詰め寄った。


「何よ、それ。詳しく説明しなさいよ」


「アメリカに行くことになった」


「アメリカ!?‥何でよ?」


「…」


「話したくないってわけ?」


「話すようなことじゃねぇってだけだ」


「何だよ、それ」

彗ちゃんは、低い声で呟いた。

「こんな直前になって、話すことなのか!?」


「最近、決まったことだからな」


重い沈黙が、さらに空気を悪くする。

居心地は、最悪だった。

誰も、言葉を発しない。

私は沈黙が終るのを、ただ待つことしかできなかった。
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