嘘で隠された現実(リアル)
玉も、呆れているのだろう。

俺と同じような顔をしている。


「バイトは?帰れってことですか?」


「いや、発注の確認でもしとけ。バイト料はちゃんと出してやるから」


「あ、そうなんだ?」

現金なもので、玉は途端に安堵の表情を見せた。

「ならいいですよ。店閉めてきまぁす」


「あの、黒雨さん…」


「心配するな。玉はあれでも、俺のお気に入りだからな」


「や、意味判んねぇ…」


俺が思わず素で呟くと、黒雨さんは俺の頭を撫でてきた。


「俺達の話を、誰かに言ったりしないってことだ。口挟んだりもしねぇよ」


俺が勢いよく顔を上げると、微笑んでいる黒雨さんが視界に映った。


「一番心配してたのは、ソレだろ?」


「‥やっぱり敵わないですね、黒雨さんには…」


「当然だろ?」

そう言って、黒雨さんは少し嬉しそうに笑った。
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