嘘で隠された現実(リアル)
「閉めて来ましたよ」


戻って来た玉が、黒雨さんに声を掛けた。

すると黒雨さんは、すかさずノートを差し出した。


「これ参考にして必要なもの書き出せ。最終チェックは俺がするから、勝手に発注の電話はするなよ?あと、在庫調べるときに割るなよ?」


「はいはい」

玉は面倒そうに返事をして、戸棚に並ぶ珈琲豆を調べ始めた。


「朱月、何か飲むだろ?どうする?」


「あ、また珈琲お願いできますか?この前飲んだのが、凄く旨かったんで」


「おお、いいぞ」

そう返事をして、黒雨さんは作業にとり掛かった。


「‥黒雨さん」


「んー?」


「俺、明後日には日本を発って、アメリカに行くんです」


「‥へぇ。もう帰って来ないのか?」


唐突に切り出した俺の話に、黒雨さんは冷静な言葉を返してきた。
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