嘘で隠された現実(ﾘｱﾙ)

「近くに居ると、やっぱり欲が出てきてしまって‥傍に居れるだけでいいからと、俺は天音に近づきました。一緒に居ると、天音の気持ちには、すぐに気付きました。正直嬉しかった。そのせいで友達以上の関係を望みそうになったけど、それ以上に俺には譲れないモノがあったから、俺は別の逃げ道を作ったんです。結局それは、天音を傷付け、俺のためにもなりませんでしたけどね」


そう‥あんなものは、何の意味もなかった。

本当はそんなこと、する以前から判っていたはずなのに…。


「そんなもんだよ。逃げ道に、良いもんなんてないさ。でもな、その逃げ道がなかったら、お前は壊れてたと思うぞ？そしたら、もっと天音ちゃんを傷付けてたかもしんねぇしな？」


「そう‥ですかね？」


緩慢な動作で、黒雨さんと視線を合わせれば、彼は俺を慰めるように、優しく微笑んでくれた。

それだけで、胸が温かくなる。