嘘で隠された現実(リアル)
「天音、その顔マジで笑えるからやめとけ」


今度は容赦なく睨みつけると、朱月は肩を竦めて苦笑した。

「はいはい、悪かったって…。それと彗のことなら、心配すんな。本人目の前にしてそれは言えねぇよ。俺だって命は惜しい。けど、こうやってからかわれるのが嫌なら、女装なんかしなきゃいいのにさ」


確かにそれは、私も思うところだった。

彗ちゃんの女装姿を見て喜ぶ女の子達に笑顔で応えている姿を見たときは、てっきり本人もその気なのだと思った。

それなのに、からかわれれば、容赦なく暴れ、相手を打ちのめすのだ。

正直、彗ちゃんが何を考えて女装しているのか理解できない。

しかし私個人の意見を言えば、彗ちゃんは断然女装姿の方が似合うと思う。

もちろん、健全な男の子に面と向かってそれを言う勇気はないのだが…。


「なんてな…」


突然、朱月は小さく呟いた。

その表情は、辛そうに見えなくもない。
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