嘘で隠された現実(リアル)
ただ、望んではいても、諦めていた。

それは、最後に皆で演奏したいという願いが、たとえ叶ったとしても、それを良い思い出にすることは、無理だと判っていたからだ。

それまでと同じように練習をして、それまでと同じような気持ちでステージに立つことは叶わないと思うと、それまでと最後の違いを突きつけられることに、言いようのない恐怖を感じた。

それまでが幸せだっただけに、最後を辛くはしたくなかった。

だから、諦めた。

別れを言うだけにしようと、そう思っていた。

それなのに、天音は言ってくれたんだ。

「最後に思い出を作ろう」と。
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