嘘で隠された現実(リアル)
正直、天音の口からそんな言葉が出てきたことには驚いた。

それと同時に、もう何もかも吹っ切れたというような表情に、僅かな胸の痛みも感じてしまった。

俺にはそんなことを感じる資格もないというのに、情けない話だ。

だが、天音の言葉は、何よりも嬉しかった。


俺では駄目だった。

天音が言ってくれたからこそ、俺は今この場所に居る。

それまでと変わらない雰囲気の中、皆と一緒に最後の演奏をすることができる。


最後の最後まで、天音は俺を解放してはくれなかった。

最後まで俺は、この気持ちを消せないままで、別れなければならない。
< 288 / 331 >

この作品をシェア

pagetop