嘘で隠された現実(リアル)
諦めきれないことも、気持ちを伝えられないことも、全ては俺の問題だ。

天音のせいではないと、判っている。

だが、少しくらい恨ませてほしい。

天音のせいでもあるのだと、心の中でくらい、文句を言わせてほしい。

たとえそれが、間違っていると判っていても、俺はそれを支えに生きていく。


「よしっ、そんじゃ、行きますかっ!」

そう声を掛け、勢いよく立ち上がった。

「最高の演奏、聴かせてやろうぜ!」


「そうですね」響が微笑み、「ああ」瞬輝が頷き、「あったり前だろ?」彗が自信たっぷりに言い切り、「言うまでもなく、当然のことだけどねぇ」神楽は微かに笑みを見せた。


初めてステージに立ったあの日に交わしたのと、同じ言葉。

もうだいぶ前のことのように感じるのに、その記憶はしっかりと残っている。

俺は溢れ出そうになる喜びを噛み締め、大きく頷いた。
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