嘘で隠された現実(リアル)
《Side 天音》


最後の演奏は、客席で聴こうと決めていた。


朱月達がステージに現れる前に、他の演奏を1組だけ聴いたはずなのだが、残念なことに、その記憶は全くない。

自分が演奏するわけでもないのに、どうやら相当緊張しているらしい。


ただ、自覚したせいで、余計に緊張が酷くなってしまった気がする。

立っていることさえ、今の私には注意が必要だ。


何とか落ち着こうとしているうちに、Star lieの姿が、薄暗いライトに照らされて露になる。


今回は飛び入り参加のようなものだったので、今から始まる演奏を知らなかった観客達も大勢居たらしく、客席はStar lieの登場に、驚きと歓喜とを混ぜ込んだ、声にならない悲鳴をあげた。
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