嘘で隠された現実(リアル)
「できれば、最後の演奏は盛大に、と考えていましたが、それは無理で‥それでも最後の演奏はしたいと、無理を言ってこの場所と時間を与えてもらいました。前回のライブで演奏できなかった曲と、私達Star lieが結成したとき初めて演奏した曲を、皆さんに聴いてほしいと思います。最後の演奏をこの場所で、皆さんの前でできることに幸せを感じながら、精一杯演奏させてもらいます」


彗ちゃんのキーボードの音色が響き出すと、客席はすぐに静かになった。

話し声は、聞こえてこない。

ステージにのみ当てられているライトと、会場一杯に広がるメロディーに、私は最後の演奏が始まったことを実感した。


凄く楽しかった。

これまで6人で過ごした時間は、その全てが『思い出』として相応しいものだと思う。

そう考えると、朱月とのあの再会は、感謝しなければいけないものなのだろう。

幸せだったぶん、辛いこともあったけれど、やはり再会しなければ良かったなんて、そんなふうには思えない。

悔しいけれど、思えない。
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