嘘で隠された現実(リアル)
「あー、ちょっと待って」


1人浸っていた私は、呼び止められるまで、朱月が立ち止まっていることに気付かなかった。

私は駆け寄ることもせず、大人しくその場で朱月を待った。

朱月は目の前の自動販売機で何か買ったらしく、それを持って私に駆け寄ってきた。


「ほら、喉渇いてんだろ?」


差し出されたペットボトルを見て、それから朱月をまじまじと見つめてしまった。


「何で?」


「何でって‥だから、喉渇いてんだろ?」


「は‥え?」


「何だよ、自分で気付いてなかったのか?」

朱月は驚いて、それから盛大に笑った。

「相変わらず鈍くせぇな」


目の前で遠慮なく笑う朱月は腹立たしいが、喉が渇いているのは事実‥のようだった。

朱月に言われて気付いたくらいだから、凄く喉が渇いていたというわけではないのだが…。
< 31 / 331 >

この作品をシェア

pagetop