嘘で隠された現実(リアル)
「ほら、特別に奢ってやるよ。徹夜で歌詞書いてくれたお礼に」


「え、何で‥星が言ったの!?」

ペットボトルを受け取りながら、私は思わず声を大きくした。


「いや?けど見れば判るって、そんくらい」


「じゃぁ、喉渇いてるってゆーのも、見ただけで判ったってこと?何それ、特技?」


純粋に感動している私の横で、朱月はプッと吹きだすようにして笑った。


「天音‥本当に無意識にやってたんだな。お前さ、昔っから喉が渇くと首触るんだぜ?まるで喉が痛い‥みたいな仕草すんの」


「え‥嘘、ホントに?」


昔から‥私は自分の癖よりも、朱月のその言葉に驚いた。

まるで朱月が、過去から今までの私をずっと見ていたかのように言うものだから、不覚にも動揺した。

朱月がずっと私を見てくれていたなんて、そんなことあるはずがないのに…。


「ホント。にしても、神楽だったら判るけど、何にもしてねぇ天音が喉渇くって‥お前らしいって言うか、何て言うか…」


「特別なことしなくたって、喉が渇くことあるでしょ!」


「確かに」

そう言って、朱月はまた少し笑った。


「ホント、ムカつく‥でも、ありがとう」


私が笑顔を向けると、朱月も優しく微笑んでくれた。

その笑顔が他の誰でもない私に向けられているのだと思うと、それだけで心が満たされる気がした。


そのとき…
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