嘘で隠された現実(リアル)
side girl
朱月(シュヅキ)と出逢ったのは、小学3年生の春だった。
始業式を待つことなく完全に散ってしまった桜の花の代わりに、青々とした若葉に見守られ、朱月は3年2組の教室で、転入生として紹介された。
「これから一緒に勉強していくことになった柳(ヤナギ)朱月くんです。まぁ、朱月くんに関わらず、クラス替えで周りは新しい友達ばかりだと思います。だから皆、仲良くするようにね」
「「はーい!」」
まだ幼さの残る明るい大きな返事が、教室内を支配する。
その返事を聞いて、新しく担任になった若い女の先生は、満足そうに微笑んだ。
そんな中で、私はジッと、朱月を見続けていた。
色素薄い髪が陽に透けてキラキラ輝いていて、見事なまでに黒髪の私は、それにとても惹かれてしまう。
とても綺麗な男の子だと思った。
けれどそれ以上に、とても寂しそうな男の子だと思った。
くっきりとした大きな瞳は、人の目を引くけれど、その瞳には輝きがなかった。
私は、それがとても気になった。
何故なら、その目は2年前の‥父が家を出て行った直後の、母の目と似すぎていたから…。
朱月は、クラスメイトの誰よりも大人びていた。
それは外見がと言うより、雰囲気が‥だ。
はしゃぐことのないその物静かな雰囲気が、朱月を大人びて見せていた。
3年生という幼い子どもでも、それを敏感に感じ取ったのだろう。
新学期が始まって1週間経っても、誰1人として、自分から朱月に声を掛けようとするクラスメイトはいなかった。
気にはなっているようだが、いつまで経ってもその好奇心が、声を掛けるまでの勇気に繋がることはなかった。
◇
「ねぇ、何見てるの?」
ある日の放課後、忘れていた宿題のプリントを取りに教室へと戻って来た私は、誰も居ないはずの教室で窓の外を眺めている朱月を見つけ、思わず声を掛けた。
今までに、朱月を目で追うことは多々あったが、それでも、声を掛けたのはこれが初めてだった。
始業式を待つことなく完全に散ってしまった桜の花の代わりに、青々とした若葉に見守られ、朱月は3年2組の教室で、転入生として紹介された。
「これから一緒に勉強していくことになった柳(ヤナギ)朱月くんです。まぁ、朱月くんに関わらず、クラス替えで周りは新しい友達ばかりだと思います。だから皆、仲良くするようにね」
「「はーい!」」
まだ幼さの残る明るい大きな返事が、教室内を支配する。
その返事を聞いて、新しく担任になった若い女の先生は、満足そうに微笑んだ。
そんな中で、私はジッと、朱月を見続けていた。
色素薄い髪が陽に透けてキラキラ輝いていて、見事なまでに黒髪の私は、それにとても惹かれてしまう。
とても綺麗な男の子だと思った。
けれどそれ以上に、とても寂しそうな男の子だと思った。
くっきりとした大きな瞳は、人の目を引くけれど、その瞳には輝きがなかった。
私は、それがとても気になった。
何故なら、その目は2年前の‥父が家を出て行った直後の、母の目と似すぎていたから…。
朱月は、クラスメイトの誰よりも大人びていた。
それは外見がと言うより、雰囲気が‥だ。
はしゃぐことのないその物静かな雰囲気が、朱月を大人びて見せていた。
3年生という幼い子どもでも、それを敏感に感じ取ったのだろう。
新学期が始まって1週間経っても、誰1人として、自分から朱月に声を掛けようとするクラスメイトはいなかった。
気にはなっているようだが、いつまで経ってもその好奇心が、声を掛けるまでの勇気に繋がることはなかった。
◇
「ねぇ、何見てるの?」
ある日の放課後、忘れていた宿題のプリントを取りに教室へと戻って来た私は、誰も居ないはずの教室で窓の外を眺めている朱月を見つけ、思わず声を掛けた。
今までに、朱月を目で追うことは多々あったが、それでも、声を掛けたのはこれが初めてだった。