嘘で隠された現実(リアル)
「で、どの部分を書き直せばいい?」


「あ、えっと‥ここと、そこ」

彗ちゃんは、楽譜の中の2箇所を指差した。


「えーそれじゃ判んない。メロディー歌ってよ」


私がそう言うと、彗ちゃんは嫌そうに顔を歪めた。

しかし、それで引き下がる私ではない。


「ほら、ここにはキーボードも無いんだし、曲アレンジした彗ちゃんにしか歌えないんだよ?」


「判ったよ…」


彗ちゃんが口ずさむ、アップテンポながらも切ないメロディー。

私は、それに引き込まれるような錯覚を覚えた。


「天音っち?」


彗ちゃんに呼ばれてハッとする。

私は目を覚ますため‥のように頭を振った。


「天音っち、聴いてなかったんだろ?」


「えっ?ちゃ、ちゃんと聴いてたよ!」


全く信用していないのか、疑うような視線を向けてくる彗ちゃん。

本当に聴いていたのに‥そう思いながら、私は楽譜を手に取った。
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