嘘で隠された現実(リアル)
何て幼かったんだろうと、今では苦笑せずにはいられない。

あんなことを言った朱月も、それを信じた私も、きっと同じくらい幼かった。

呆れるほど純粋だった…。


成長していくにつれて知った嘘。

成長していくにつれて判ってきた真実。

真実は嘘で隠すものなのだと、十数年の人生で学び尽くした。


もうあの頃のようには『不幸なこと=子どもの天使の失敗』だなんて思えないけれど、このときはただそれを信じていた。

いや、きっと信じたかった…。


幼すぎたから?

純粋だったから?

それとも‥朱月が言ったことだったから…?


今でもそれは、判らない。

けれど、たぶん私はこのとき既に、朱月に惹かれ始めていた。

このことがきっかけで、私は朱月に恋をした。



次の日から、私は積極的に朱月に声を掛けるようになった。

決して社交的でない私は、挨拶をするだけでも神経を使ってしまう。

けれど、無愛想ながらもきちんと返事をしてくれる朱月を見ては、こっそりと胸を躍らせた。


度々話し掛ける私に慣れてくれたのか、その2日後には、一緒に帰ってくれるようにもなった。

私の家は学校から少し距離があったが、朱月の家に近いことを知ったときは、初めてそのことに強く感謝した。
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