嘘で隠された現実(リアル)
俺は目を開け、教室に独り立つ彗に、再び視線を向けた。


「失恋の歌かぁ‥俺にピッタリじゃんかよ」

彗は、自嘲するように笑った。

「天音っちはいつだって本気で俺を褒めてくれるけど‥それでもやっぱ、天音っちの中で、俺が朱月を越えることはないんだよな…。さっきの会話でも、朱月のことは少ししか触れてないのに、あんな顔するんだもんなぁ。でも、俺を喜ばせる言葉は忘れない。マジで残酷すぎ…」


俺は、悲しげに俯く彗から視線を外した。


夕日に照らされてできた自分の暗い影を見つめながら、俺は静かに苦笑した。
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