嘘で隠された現実(リアル)
「ちょっとショック。あたしバンドのファンなのに…」


「でもさ、彼女がいるってわけでもないんでしょ?なら、いいんじゃないの?」


「そーゆー問題?‥ってか、もう帰るみたいだよ」


その言葉に反応して、思わず顔を上げた。

通り過ぎていく車の合間から、朱月が1人で歩いているのが見える。


「もう別れるんだ?早くない?」


「用事でもあるんじゃないの?それより、もういいじゃん。あたし達も行こうよ」


「そうだね。ほら、天音も行こ?」


そう声を掛けられ、腕を引かれた。

しかし私は、私の腕を掴むその手を、そっと戻した。


「ごめん、やっぱりあたしは帰る」


「え、ホントに帰るの!?何で?用事があるわけじゃないんでしょ?」


「用事はないんだけど、歌詞考えてたら徹夜しちゃって‥殆ど寝てないんだよね」


これは、本当のことだった。

机に噛り付いて頑張ったのだが、昨日は思ったように捗らず、結局ベッドに入ったのは朝方だ。

普段8時間近く睡眠を取っている私は、言うまでもなく寝不足だ。
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