吸血鬼達と戯れを
「毎度っ」

男が小銭を箱に仕舞う。

「なぁ」
「あ?」
「隣町ってどんな所なんだ?」
「兄ちゃん、他の町に行った事無いのか?」

狩野は首を横に振る。

「いや、最近は行ってないからさ」
「向こうもあいからわずだよ。吸血鬼は消えないし、景気は悪いし…。全く、昔の日本は何処に行ったんだ?」
「ふぅん。分かった。ありがとう」
「またなんか会ったら来てくれよな」

狩野は店を後にすると、会話の最中に見掛けた人影を追う。

人影に追い付くと肩を叩く。

「よっ。由井。元気か?」

由井の肩がビクッと跳ねる。

「おいおい、そんなに驚かないでも…」
「あ、ごめん。ちょっと考え事してたからさ。それより、話を聞いたよ?道を間違えたんだって?」

どうやら二人の失敗談は町中に広がってるみたいだ。
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