運命の人はお義兄様
静夏の事を思い出したあの日も…。
俺は普通じゃなかった。
俺をちらちら見ながら、百面相する静夏。
抱きしめたい衝動に駈られる。
その瞬間―――――‥。
あの家での事が頭に流れる。
「こうくん」っと言ってから、振り向いた静夏の顔…。
期待に満ち溢れた表情から
驚きと不安の顔に変わった。
あんな表情で「絋希さん」と呟かれた俺は、酷い顔をしていただろう。
静夏を欲しいと思うと、すぐに浮かんでくる……。
俺はあの顔が浮かばないように、ピアノを弾き続けた。