運命の人はお義兄様
"コンコン"
ドアをノックする音で、私の体は天井まで飛ぶかのように跳ねた。
「失礼します。お時間ですので、ステージの方へ…」
「はい」
私はさっきのスーツの方についていった。
そこには天草さんがすでに準備をしていた。
私は一礼し、用意されていたイスに座った。
「瀬野さん。番号的に私からの演奏なの。聴いていて下さるかしら?」
「…は、い」
本当は聴きたくなかった。
好きな人と好きな人に愛されている人が演奏しているところなんて…。
お互い想い合っている2人の演奏は、私なんか及ばない。
それでも私は、絋希さんが好きだから…。
こうくんの言葉を信じて、自分の音を奏でるしかない。